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写真:丸藤葡萄酒

【イベント開催レポート】丸藤葡萄酒オンラインワイナリーツアー by EAT UNIVERSITYを開催しました

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2020年7月26日(日)、EAT UNIVERSITY初のオンラインイベント「丸藤葡萄酒オンラインワイナリーツアー by EAT UNIVERSITY」を開催しました。参加者の募集に際しては我々スタッフの予想を上回る反響を頂き、約100人としていたお申し込み予定が、締め切りを待たず満席となりました。

今回のオンラインワイナリーツアーの案内人は、山梨県甲州市勝沼町で130年続く老舗、「ルバイヤート」ブランドで知られるワイナリー、丸藤葡萄酒の工場長・狩野高嘉さん。進行役にEAT UNIVERSITYの人気連載「週末ワインライブラリー」の執筆者・るもわ脛さんを迎え、充実の内容でお送りしました。ワインで乾杯をして、ツアーのスタートです!

丸藤葡萄酒の工場長・狩野高嘉さん。手には自社ワイン「ルバイヤート甲州シュール・リー」

勝沼町藤井で130年。老舗ワイナリー、丸藤葡萄酒

山梨県は、降水量が少ない、昼と夜の寒暖差が大きい、日照時間が長い、土壌の水はけが良い、といったブドウの栽培に適した特徴が揃い、言わずと知れたワインの名産地です。山梨県のなかでも、扇状地※の地形を持つ甲州市勝沼町の藤井エリアは、特に土壌の水はけが良く、果樹園に向いているとされています。今回ツアーにご協力いただく丸藤葡萄酒は、明治23年(1890年)創業の老舗。この藤井エリアにブドウ畑とワイナリーを持ち、「ルバイヤート」ブランドで知られるワインを生産、国産ワインコンクールや日本ワインコンクール、日本ワイナリーアワード等で数々の受賞をされています。

※扇状地(せんじょうち)とは、山の麓に見られる扇状、または半円状の地形のこと

3つのブドウ畑から、狩野さんによる現地リポート

丸藤葡萄酒にはワイナリーの周辺に旧屋敷、蜂の城、大棚、等と名付けられた自社畑を始めとするブドウ畑が広がり、それぞれの畑で、品種に適した栽培法を用いてブドウを育てています。狩野さんが最初に向かったのは、日本固有の品種「甲州ブドウ」を栽培している「棚栽培」の畑。「棚栽培」とは枝を横に、平面的に広げる栽培方法で、江戸時代から続くとされる日本独自の文化。特徴としては、房の位置が高いので風通しが良く、作業性が良い。しかし、剪定が難しく、1本の木への負担が大きいといったデメリットもあるそうです。

ちなみに「甲州ブドウ」には、奈良時代からの歴史があると言われています。ルーツは所説ありましたが、2013年、DNA解析によってその歴史が遂に判明。カスピ海付近のコーカサス地方で生まれたヴィニフェラ種※がシルクロードを通り、中国を経由して、はるばる日本に伝えられたことが分かったとのこと。

※ヴィニフェラ種とは、ワイン用に使われるヨーロッパ系ブドウのこと。ブドウの品種を大別すると、生食用のラブルスカ種(アメリカ系)と、ワイン用のヴィニフェラ種(ヨーロッパ系)に分けられる

美しく実る、棚栽培の甲州ブドウ。「美味しいワインを造り続けることで、甲州ブドウを守りたい」狩野さんはこう決意を語っていました

狩野さんが次に向かったのは、世界的に主流な「垣根栽培」の畑。こちらでは「シャルドネ」や「ソーヴィニヨンブラン」、欧州系品種を栽培中です。「垣根栽培」は、「棚栽培」に比べて立体的。苗木を植えてから収量確保が早く、1本の木が負担する房の数が少ないことから凝縮したブドウが収穫できるといった特徴があります。

「棚栽培」一択であった日本で「垣根栽培」が根付いたのは、今から約30年前、あるワイナリーが深く関係しています。1962年から勝沼にワイナリーを構えるマンズワイン(キッコーマンのワインブランド)の志村富男さんが「垣根栽培」と雨避けビニールを組み合わせた「マンズ・レインカット栽培法」を考案、企業間の枠を超えて技術を普及させたのです。この栽培法は日本の気候風土に合っていたため、小さなワイナリーもこの栽培法を取り入れて「垣根栽培」が広まっていきました。

実にビニールがかけられた状態の、垣根栽培

3つ目に紹介するのは「一文字短梢剪定栽培法」の畑。まだ試験的な畑ではあるそうですが、ここでは「プティヴェルド」、「ソーヴィニヨンブラン」を栽培。「一文字短梢剪定栽培法」は棚栽培をベースに、どうにか垣根栽培風にできないかと考えられた栽培法で、上部が棚栽培、下部が垣根栽培のハイブリッドになっています。剪定がとても楽で、房が並んで実るので雨避けのビニールがかけ易く、作業効率が良いといったメリットがあるそうです。

「甲州ブドウ」にぴったりな「シュール・リー製法」

ワイナリーへ移動して、「甲州ブドウ」と相性の良い「シュール・リー製法」の紹介が始まります。「シュール・リー」とはフランス語で「澱の上※」。つまり、澱の上で熟成させる、澱からの旨味成分を引き出すワインの醸造法を指します。澱とは、通常のワイン造りにおいて発酵完了後、きれいに取り除かれるもの。しかし澱をそのままにしてワインを寝かせることで、独特の香味を与えることができるそうです。

「シュール・リー製法」は、もともとフランスのロワール地方、ロワール川河口付近のペイ・ナンテ地区で生産される白ワイン「ミュスカデ」の醸造法として有名でした。この「シュール・リー製法」が「甲州ブドウ」にも合うことを発見したのは、日本を代表する大手ワイナリーのひとつシャトー・メルシャン。1980年代、勝沼のワイン造りを地域一体で盛り立てていこうという思いから、他のワイナリーへもこの発見を公開したのだそう。

※澱(おり)とは、アルコール発酵(酵母等の働きで、アルコールと二酸化炭素を生み出す)の役目を終えた後の酵母が集積したもの

丸藤葡萄酒から、おすすめのワインをご案内

この他にも、半地下にある瓶の貯蔵庫、フレンチオークを使ったワイン樽、コンクリートタンクの「ワインのダイヤモンド」と呼ばれる輝く酒石の解説等もあり、約90分、たっぷりとワイン造りの背景を知ることが出来ました。これまで丸藤葡萄酒が築き上げてきた歴史や功績に甘んじることなく、常に10年、20年先を見据えて畑と向き合っている狩野さんを始めとする造りての姿。そして、技術や発見を自社のみで囲い込まずに共有することで、産地全体としてのワイン造りの未来を考えたワイナリーのエピソードが、とても印象に残っています。参加者の皆様からは以下のような感想を多くいただき、スタッフ一同とても嬉しく思っています。

造り手のお話を伺った事で、頂いているワインの味わいが増し、お友達の手土産に持っていくときにも話に花が咲くと思います」
いままで2回ほど訪問させていただいていますが、より好きになりました」
「実際にワイナリーツアーに行ったような気がしました。栽培から製造工程、貯蔵庫、お店まで見せて頂き、楽しかったです」
「コロナ禍でワイナリーへ行けず、楽しみを失っていたところへこのようなイベントを企画してくださり本当に感謝です。ありがとうございました」

最後に、狩野さんがセレクトする、丸藤葡萄酒のおすすめワインをご紹介。本数限定のものもあるので、ご興味のある方はお早めに。

2018 ルバイヤート甲州シュール・リー



品種:甲州ブドウ100%
辛口・白ワイン。国産コンクールでの金賞受賞、国際線ファーストクラスへの採用実績もある、丸藤葡萄酒の自信作。シュール・リー製法の特徴が良く表れた、溌刺とした香りと厚みのある味わいが特徴。香味を活かすため、あまりろ過をせずに仕上げている。和食全般に合わせやすく、特に魚介料理との相性が良い。

2014 ルバイヤート甲州シュール・リー 5年熟成


品種:甲州ブドウ100%
2014ルバイヤート甲州シュール・リーを瓶詰した後、限定1,500本のみを5年間熟成させた。若さもありながら、落ち着きのある柔らかな香りと、繊細かつまろやかな味わいのワインに生まれ変わり、甲州ワインの新たな一面が楽しめる一本に。

2017 エチュード ルバイヤート

品種:シャルドネ98%、プティヴェルド2%
柑橘系の果実やバニラの香り、キリッとした酸味が心地よい繊細なスパークリングワイン。オークの古樽で醗酵させ、約4ヶ月間バトナージュを行いながら熟成。その後、瓶内二次醗酵を行って造られた。これからの夏には、キレのある泡がぴったり。

2017 ルバイヤート プティヴェルド 
(2020年8月6日より販売開始)

品種:プティヴェルド100%
赤・フルボディ。プティヴェルドはフランスでは補助品種として知られているが、山梨の気候風土にとても良く合い、存在感のある個性豊かなワインが出来上がる。豊かな果実感が新樽の華やかな香りと相まって、アタックの強いワインとなった。

丸藤葡萄酒工業(株)
住所:山梨県甲州市勝沼町藤井780
URL:http://www.rubaiyat.jp/