新たなチャレンジを止めない「カネ十農園」にお茶をトコトン楽しむ方法を学ぶ|イベントレポート
2019年7月26日(金)にイベント「『カネ十農園』で学ぶ、本当に美味しいお茶の淹れ方と楽しみ方」を開催しました。会場は「カネ十農園」が運営するティーサロン「カネ十農園 表参道」。講師は同店で日々美味しいお茶を提供している松本貴志さんです。
1888年から静岡県牧之原で茶農園を営み、土作りから加工、販売までを一貫して行っている「カネ十農園」のお茶は、パッケージもオシャレで若い世代のギフトにも人気。そんな伝統を守りつつ新たな試みも続ける同園から、お茶の多様な楽しみ方を教わります。
今回はお茶の淹れ方はもちろん、その魅力を引き出す新たな楽しみ方の探求がテーマ。抹茶ではなくほうじ茶を点ててみたり、お茶のカクテルが振る舞われたりと、いつもとは異なる角度からのアプローチを楽しみました。
意外と深い煎茶の世界に驚き
まずは煎茶の淹れ方を学びます。新しい楽しみも基本があればこそ。
そもそも煎茶とは「蒸してから乾燥させ細かくした茶葉から、お湯で抽出したもの」。本格的に美味しく淹れるためには「水を沸騰させた後、湯冷ましをして85℃くらいになってから淹れるといいです。硬水ではなく軟水を選ぶと、より色が出やすくなります」と松本さん。
煎茶道では同じ茶葉を使って3〜4回淹れるそうです。一煎目は香りがよく、二煎目は味がよくでる、淹れる度に風味に違いが生まれるというから奥が深いですね。
松本さんから煎茶の淹れ方を詳しく教えてもらった後は、参加者のみなさんが急須を使って挑戦。ペットボトル入りのお茶が市民権を得て久しい昨今、急須でお茶を淹れることは少なくなったのかもしれません。家に急須がないなんて話も……。温かい淹れたてのお茶は身体にも心にも沁み渡ります。
ほうじ茶を点てるという新感覚
煎茶に続いては、ほうじ茶が登場です。お茶を点てるというと抹茶の粉挽きが馴染み深いですが、今回はほうじ茶。
松本さんの鮮やかなお点前に目を奪われながらも、質問も忘れない参加者のみなさん。
「ほうじ茶を点てるんですか!?」という驚きに、松本さんは「そうですね。お茶を点てるには茶葉を粉のように細かくする必要がありますが、ほうじ茶は焙煎してから煎るので茶葉が硬く、粉末にするのが難しいんです。そんな理由もあって、ほうじ茶をわざわざ粉にして点てるということは、あまり行われてこなかったですね」と笑顔。
「茶筅はジグザグを描くように動かして、最後はノの字を描いてから上に切ります。ほうじ茶の場合は粉っぽさがあるので抹茶より長めに点てるといいです」とコツを教わったところで、参加者のみなさんも体験。店中にほうじ茶の良い香りが一気に広がりました。
自分で点てたほうじ茶はアイスクリームにかけてアフォガートに。飲み物としてではないお茶の姿が新鮮です。
清涼感のある煎茶カクテルが、夏の夜を彩る
ここまで美味しいお茶を教えてくれた松本さんは、実は18年間バーテンダーをしていたという経歴の持ち主。最後はそんな松本さんならではのお茶カクテルを振る舞っていただきました。
カクテルシェイカーに茶葉を入れ、シェイクする松本さん。みなさんは一斉にスマートフォンをスタンバイです。ティーサロンである「カネ十農園 表参道」が、さながらバーのよう。
5人分を2回もシェイクするのは腕がかなり疲れるそうで、その疲弊ぶりに笑いが。煎茶とミントシロップ、ジンを使い、エルダーフラワーを添えた美しいカクテルは、夏にぴったりの、さわやかですっきりとした味わいです。
イベント当日は金曜日。オシャレなカクテルを片手に会話も弾みます。
日本の伝統にスイーツ、カクテルと充実の内容に盛り上がりを見せた今回。参加者のみなさんからは産地の違いなどマニアックなものから、すぐにでも試したいお茶と他の食品の相性まで、たくさんの質問が飛び出しました。
ちなみに静岡や狭山のような東の地域は色が濃いめで少し渋みが、九州や宇治などの西の地域は色が薄く、旨味が強いものが多いそうです。自分好みのお茶を探す参考にしてみてはいかがでしょうか。鹿児島では50℃くらいのぬるま湯で淹れたりもするのだとか。
お茶に合わせるのは「果物。特に桃や梨との相性がいいです」と松本さん。「お酒なら黒糖焼酎と水出し茶も相性がいいですね。お茶は渋みがあるので、辛口のものと合わせると味がぶつかってしまいがちです。合わせるなら甘口のものがいいと思いますよ」。
当たり前のように日常にあるお茶だからこそ、そのポテンシャルを最大限に引き出して楽しみたいものです。今回はその道のプロである「カネ十農園」だからこその、お茶そのものをシンプルに、時にアレンジを加えて楽しむ方法を学ぶことができ、笑顔があふれるイベントになりました。
カネ十農園 表参道
住所:東京都渋谷区神宮前4-1-22
電話:03-6812-9637
定休日:月曜日
URL: https://kaneju-farm.co.jp/
写真:村山康則