味噌風味もつ鍋に合わせるオーストラリア産スパークリングワイン｜週末ワインライブラリー
この連載で追求するのは、自分へのちょっとしたご褒美や友人宅に招かれた際に持参したい、週末にゆったり楽しむワイン。上限予算は3,000円。ハレの日のラグジュアリーなワインや、毎日の晩酌用のデイリーワインも欠かせないけれど、最も深くワインの愉しさ奥深さを教えてくれるのは週末に味わうワインたちかもしれない。レクチャーしてくれるのは、世界各国を飛び回りながら年間500種以上のワインを飲む干す「るもわ脛」氏。
暖冬とはいえ、寒い日が時おり訪れる。ひと仕事終え、都内のもつ鍋屋に入り、ビールをやりながら馬刺しをつまみ始めた。身体を温めるもつ鍋は味噌風味で。鍋が煮立つのを待ちながらグラスが空いたので、次の飲み物をとメニューを手に取ると、いくつか並んだ日本酒銘柄の横にオーストラリア産スパークリングワインが目に入る。使われているブドウはシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ。そして手間のかかる瓶内二次発酵、つまり一度ワインを醸してからさらに酵母と糖分を加えて瓶に栓をし、ワインに泡を閉じ込めて仕立てられている。ブドウと製法はシャンパンと同じということだ。店頭価格で4,000円弱、すると小売価格は2,000円程度。小売価格で通常、5,000円を超えるシャンパンの半額以下、大きな期待を持たずに頼んでみたこのワインが大当たりだった。
写真提供: Taltarni Vineyards
グラスに注ぐとややはっきりした色調のイエロー、非常に力強い泡立ち。完熟した力強いブドウの芳香が豊かに広がる。上品さをしっかりキープしながら、繊細な料理からB級グルメまで、そして前菜からメインまで、しっかりと寄り添ってくれそうな懐の広い万能スパークリングワインだ。急な来客にもこういうワインがあれば大抵の料理との相性をカバーできるので、自宅にもストックしておきたい一本。さて、もつ料理屋で味噌風味のもつ鍋の後にこのワインを口に含むと、厚みのある果実味とバランスよく存在する酸味が甘辛い味噌とモツの旨味を更に引き立て、モツ、ワインの無限ループに陥る。味噌とモツの旨味を含んだキャベツ、ニラとも相性良し。他にも山菜の天ぷら、ソテーした白身魚などとの相性も非常に良さそうだ。
ワイナリーについて調べてみると1969年設立、50年の歴史をもつ。対岸にタスマニアを臨むオーストラリア南部のビクトリア州に位置しており、冷涼な気候がもたらしたであろう酸味もワインの魅力のひとつだ。それが味噌風味もつ鍋にまさかの相性の良さをもたらしてくれた。
写真提供: Taltarni Vineyards
Taltarni T-Series Brut（タルターニ ティー・シリーズ ブリュット）
生産地：オーストラリア
生産者：Taltarni Vineyards (タルターニ・ヴィンヤーズ)
品種：シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ
年間500種類ほどのワインを嗜み、年間消費量は浴槽1杯程度。フランス各地、イタリア、スペイン、オーストリア、スイス、クロアチア、ニュージーランドなどに加え、日本国内各所のワイナリーを訪問し、ワイン愛をさらに深めている。自宅で200本収納可能なワインセラーから選り取り楽しむ晩酌ワインが日々のエネルギー源。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。
