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「飲む」
画像:silver label

6年前のバル巡りを鮮やかに思い出させる、濃厚な果実味と強靭な余韻「フアン・ヒル シルバー・ラベル」|週末ワインライブラリー

「飲む」

この連載で追求するのは、自分へのちょっとしたご褒美や友人宅に招かれた際に持参したい、週末にゆったり楽しむワイン。上限予算は3,000円。ハレの日のラグジュアリーなワインや、毎日の晩酌用のデイリーワインも欠かせないけれど、最も深くワインの愉しさ奥深さを教えてくれるのは週末に味わうワインたちかもしれない。レクチャーしてくれるのは、世界各国を飛び回りながら年間500種以上のワインを飲む干す「るもわ脛」氏。

世界最大のブドウ栽培面積を持ち、世界最大のワイン輸出国でもあるのがスペインだ。量で他国を圧倒していることも強さの一つだが、品質の高さも折り紙付きである。

6年ほど前にスペインを旅した際には伝統的な赤ワインの銘醸リオハ、リベラ・デル・ドゥエロ、比較的新しい産地ながら評価がうなぎ上りのプリオラートなどを巡り、生産者がワインに表現したバックグラウンドに触れた。訪ねる先々、風土の個性をいかに忠実にワインに伝えるかを重視し、真摯にワインづくりに取り組む姿を目にした。

もちろん、デイリーの消費を支える量産志向ワインのレベルもあなどれないが、高品質志向のものは土地とブドウの個性を豊かに表現した芸術作品に溢れている。手間のかかる瓶内二次発酵で造られるスパークリングワインのカヴァは、良質なものはシャンパンと甲乙つけがたい。海岸沿いのリアス・バイシャスでアルバリーニョ品種を用いて造られるワインは海のワインとも呼ばれ、タコのガリシア風などのシーフード料理と絶妙なコンビネーションだ。

さらには知名度がそれほど高くない産地にも多くの掘り出し物が眠っている。地中海沿いのバレンシアから少し内陸に入ったフミーリャ地方ではモナストレル品種から興味深いワインが生まれている。モナストレルはフランスではムールヴェードルと呼ばれ主に南仏で栽培される。

活き活きとしたチャーミングな果実味に溢れ、タンニンが心地よく余韻を引き締める。夏は気温が40度に達する一方で冬は氷点下にまで下がる、典型的な大陸性気候のフミーリャ。厳しい自然条件と痩せた土壌環境によりブドウの収穫量は抑えられ、一房一房に風味が凝縮される。

そんなフミーリャでモナストレルから造られるワインのなかでもおススメはJuan Gil(フアン・ヒル)が造るSilver Label(シルバーラベル)。

ワイナリーは1916年創業、4世代100年にわたってワインを脈々と造り続けている。スペイン旅行中のバル巡りで、活気あふれるお店でグラス売りのこのワインを見つけた。ブランチからワイン漬けでその日すでに十数杯目のグラスで足元もフラフラだったが、このワインの美味はしっかりと記憶に残っていて、先日ネット購入し6年ぶりに楽しんだ。

よく熟したプラム、プルーンなどを思わせる濃密な果実味は的確な酸味に支えられていて、やや強めの樽香がしっかりと馴染んでいる。微かに黒胡椒などのスパイスのニュアンスも感じながら、ジンワリと舌に残るタンニンを伴う非常に長い余韻。ピーマンの肉詰めと合わせてみたがとても相性が良い。オイスターソースの甘辛を含んだ合い挽き肉の肉汁の旨味と、ピーマンの青みと辛みが混じり合った一口に、ワインのチャーミングな果実味がぴったりと寄り添う。

 

画像:Silver Label

 

数日に分けて飲んだが、風味はしっかりと持続した。旅行先で訪れたスペインのワインバーでグラス売りされていたのは、翌日にキャリーしても風味を維持、むしろ好ましい変化を遂げるからだろう。変化を楽しみながらちょびちょびと飲みたいが、魅惑の果実味についつい飲み進み気付くとボトルが空になってしまう魅力的なワインだ。

フアン・ヒル シルバー・ラベル
生産地:スペイン(フミーリャ地方)
生産者:フアン・ヒル
品種:モナストレル 100%