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「飲む」
画像:ニコライホフ

ヴァッハウ渓谷で造られる、オーストリアワイン原点のワイナリーからの一本|週末ワインライブラリー

「飲む」

この連載で追求するのは、自分へのちょっとしたご褒美や友人宅に招かれた際に持参したい、週末にゆったり楽しむワイン。上限予算は3,000円。ハレの日のラグジュアリーなワインや、毎日の晩酌用のデイリーワインも欠かせないけれど、最も深くワインの愉しさ奥深さを教えてくれるのは週末に味わうワインたちかもしれない。レクチャーしてくれるのは、世界各国を飛び回りながら年間500種以上のワインを飲む干す「るもわ脛」氏。

オーストリアを訪問したのは5年前の9月と4年前の12月、いずれも秋冬の気温の低い時期だった。特に4年前の訪問は年末も近く気温が低く、郷土料理のグーラッシュで身体を温めたのが懐かしい。グーラッシュは隣国・ハンガリーに由来する料理で、牛肉をパプリカソースで煮たもの。外見はビーフシチューのようだ。

また、観光客にも人気のウィーンの老舗レストラン「フィグルミュラー」では、王道のウィーナーシュニッツェルを注文。顔よりも大きなサイズの仔羊のカツレツで、これをほお張っては、現地で栽培面積の3割を占める最も重要な品種、グリューナー・ヴェルトリーナーで造られたワインを口に運ぶ。空気が凛として寒さが染みる冬、白ワインの果実味の透明感の高さがさらに増すように感じる。

さて、首都ウィーンから鉄道で1時間ほどでヴァッハウ渓谷に到着、グリーンがかった豊富な水量をたたえる川幅の広いドナウ川を眺めつつ、いくつかのワイナリーを巡った。

特筆すべきワイナリーの一つニコライホーフは、2000年前にローマ人が建設したワインセラーが土台となっており、オーストリアワインの歴史を語るうえで外せない。また、同じくドナウ川沿いには、1860年にクロスターノイブルク修道院において世界最古の醸造学校が開設されている。ワイン生産量の8割程度が国内消費されるため、なかなか目にする機会が少ないかもしれないが、オーストリアは洗練されたワイン文化をもつ重要な国の一つだ。

さて、ニコライホーフに話を戻すと、ワイナリーに併設されていたレストランでウィーナーシュニッツェルを注文、同ワイナリーの6種のグラスワインと合わせた。グリューナー・フェルトリーナー、リースリング、ゲヴェルツトラミネール品種の複数の収穫年のものを試したが、いずれも透明感の高いピュアな果実味、凛としたメリハリのある酸味が魅力的で、ウィーナーシュニッツェルの仔羊の上品な脂身にも好相性だった。

ニコライホーフは1970年代初頭よりビオディナミ農法を取り入れ、国内の優良ワイナリーの中でビオによる認定を受けた有機農法協会の最初の正式メンバーでもある。手間をかけて栽培されたブドウが、ワインの魅力の源泉だ。

Nikolaihof

オーストリア旅の道中、ワイナリーやレストランで白ブドウはグリューナー・ヴェルトリーナー、ゲヴェルツトラミネール、ソーヴィニョン・ブラン、ピノ・ブラン、マスカテラー、リースリングなど、黒ブドウはツヴァイゲルト、ブラウフレンキッシュなど、様々な品種から造られるワインを試したが、たどり着いたお気に入りはグリューナー・ヴェルトリーナーだ。

透明感の高い果実味に含まれる青りんごを思わせるニュアンスが魅力でもある。ニコライホーフのグリューナー・ヴェルトリーナーは日本でもネットショップなどで購入可能で、ぜひ試したいオーストリアワインの王道だ。主張しすぎない透明感の高いワイン果実味には、出汁や旨味を楽しむ和食にもしっかりと寄り添ってくれそうだ。

旅行最終日はウィーンのホテル ザッハーで定番のチョコレート濃厚なケーキ、ザッハトルテを買い、ワイナリーで買い集めたお気に入りのオーストリアワインとともに帰路についた。

ニコライホーフ グリュナー・ヴェルトリーナー
生産地:オーストリア(ヴァッハウ地方)
生産者:ニコライホーフ
品種:グリューナー・ヴェルトリーナー 100%

画像提供:株式会社ワイングロッサリー ( https://www.winegrocery.com/fs/winegrocery/1241/03116 )