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「飲む」

出前鮨に国産オレンジワインを|週末ワインライブラリー

「飲む」

この連載で追求するのは、自分へのちょっとしたご褒美や友人宅に招かれた際に持参したい、週末にゆったり楽しむワイン。上限予算は3,000円。ハレの日のラグジュアリーなワインや、毎日の晩酌用のデイリーワインも欠かせないけれど、最も深くワインの愉しさ奥深さを教えてくれるのは週末に味わうワインたちかもしれない。レクチャーしてくれるのは、世界各国を飛び回りながら年間500種以上のワインを飲む干す「るもわ脛」氏。

外出を控えている今日この頃、時々、鮨の出前を取り、彩り豊かなネタを頬張ってはワインを一口すすり相性を楽しんでいる。開栓したワインは一度に全て飲み切る必要はなく、何種類かを同時に開け数日から1週間掛けて飲んでいる。以前は飲み残しボトルには専用の吸引器具を使ってボトル内の空気をせっせと抜いていたが、今はコルクを瓶口に戻すだけにして適度な酸化による風味の変化を楽しんでいる。ちなみに最近は、注目している日本ワイン4、5本の栓が常に空いている。出前鮨を頼みそれらを総動員させて、どのネタにどのワインが合うのか鮨とワイングラスを行き来して自分なりのベスト・コンビネーションを見つけるのだ。

そのように鮨とワインのおうちペアリングを楽しんでいる中で、どのネタとも相性の良いワインをみつけた。深みのある旨みをもつ熟成金目鯛、鉄分を伴うマグロ、柔らかい甘みを伴うイカ、プリプリで肉厚の帆立、脂の乗ったサーモン。。。光り物、赤身、貝、甲殻類と幅広いネタと合うオールマイティワインなのである。“シャトー・メルシャン 笛吹甲州 グリ・ド・グリ”だ。ワインの色合いは鮮やかなオレンジの強いサーモン・ピンク。香りには柿、ビワに加えスダチ、微かにショウガ系のヒントも。味わいは滋味溢れるやさしい凝縮感で、柔らかい酸味、やんわりと上品に当たるタンニン、ゆるゆると続く余韻に柔らかく上品な苦味を伴う。行き過ぎず控えめな果実味が魚の風味には絶妙なバランス感で、ワインの香りの中のスダチのような柑橘のニュアンスは寿司に薬味のように寄り添う。また、鼻孔を抜ける日本酒の吟醸香のようなニュアンスも寿司には好相性だ。ちなみに筆者は鮨単体ではマグロが好物なのだが、このワインと合わせるなら旨味が引き立つ熟成金目鯛がおすすめである。

製法としては果皮の色合いと風味がワインに伝わるように作られている点に特徴があり、ワインの色調と風味にアクセントが生まれている。2002年から山梨県各地のブドウを使用して作られているこのグリ・ド・グリのシリーズだが、今ではこのワインのスタイルに合った笛吹地区のブドウで作られているとのことだ。人件費も高く原料コストがどうしても高くなってしまう日本ワインの中で、二千円台でこの品質は文句なしのコスト・パフォーマンスだ。白ワインの醸造時に果皮と共に醸したオレンジワインが世界的に流行中だが、まずは同様の造りの日本ワインから気軽に試してみたい。

シャトー・メルシャン 笛吹甲州グリ・ド・グリ
生産地:日本(山梨県)
生産者:シャトー・メルシャン
品種:甲州(100%)