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写真:月心 そば

海外を放浪した末に、辿り着いた蕎麦職人の道。素材にとことんこだわる東京屈指の蕎麦の名店「蕎や 月心」

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夏の暑さがじわりじわり近づいて来ると、体と心をキリリとしめてくれる、冷たい蕎麦が食べたくなる。東急東横線 祐天寺駅、もしくは学芸大学駅から歩いておよそ10分。閑静な住宅街の一角に店を構える蕎麦屋「蕎や 月心(そばや つきごころ)」には、近隣から、そして少し遠くから電車に揺られて。方方から蕎麦好きたちが訪ねて来る。

月見好きだという、店主が命名。「月」という字に、おもてなしの心をあわせて「月心(つきごころ)」

蕎麦打ちに魅せられて、蕎麦屋になろうと思った。「蕎麦打ちが面白い」その気持ちは今も変わらない

オープン以来幅広い人々の心を掴み、2015年から7年連続で「ミシュランガイド東京」へビブグルマンとして掲載されている「蕎や 月心」。蕎麦を打つのは、店主の片所弘考さん。蕎麦打ち一筋な職人かと思いきや、意外にも片所さんは、もともと飲食業とは全く縁のないサラリーマン。ワーキングホリデーを利用してニュージーランドやカナダへ渡ったり、中国でメディア関係の仕事をしたり…。蕎麦の魅力へと辿り着き、蕎麦職人を目指したのは、34歳の頃。

蕎麦に魅了される最初のきっかけとなったのは、蕎麦打ち名人 高橋邦弘さんの著書「そば屋翁 僕は生涯そば打ちでいたい」。

「本の中で紹介されている蕎麦の打ち方を手本に、自宅で初めて蕎麦を打ちました。全く上手くできず、悔しくて。当時築地にあった蕎麦打ち教室へ申し込んだんです。講師は名店「一茶庵」出身の方でした。蕎麦打ちの所作や出来栄えがとても美しく、蕎麦の知識も豊富で、蕎麦打ちの沼にみるみるうちにはまっていきました。」

1998年発刊「そば屋 翁 僕は生涯そば打ちでいたい。」(河出書房新社)

蕎麦打ち教室へ通うようになり、後にその教室のアシスタントとして勤務。日々蕎麦打ちの奥深さに魅了されていく片所さんが、「蕎麦職人の世界」へ本格的に足を踏み入れる転機となったのは、兵庫県芦屋市の有名店「土山人」との出合いだった。

「自家製粉を玄蕎麦の殻剥きから行っていること、そして創業者の渡邉榮次さんが40歳の時、異業種から蕎麦屋へ転身したこと知って、とても興味が湧いたんです。実際に芦屋まで足を運び、「土山人」で食べた蕎麦は想像を超えるほど美味しく、お店の雰囲気やスタイル、陶器の器やテーブル、椅子などお店にあるもの全てに魅了されました。帰ってすぐ、渡邉さんへ履歴書を送りました(笑)」

当時、片所さんは34歳。体ひとつあれば何とかなるという気持ちで、「土山人」での修行の道へ飛び込んだ。若い職人見習いに混ざって、日夜修行に励む。「土山人」はどんどん評判となり、当初は芦屋の一店舗経営であったが、関西・関東に多店舗展開。片所さんもいくつかの店舗で経験を重ねて、40歳を機に独り立ちを決意。2009年の夏、「蕎や 月心」を開店した。

「蕎麦打ちが面白いから、蕎麦屋になろうと思ったんです。長年蕎麦を打ち続けていますが、蕎麦打ちは面白い!それは今も、ずっと変わりません。」

外一で打つ、香り高い蕎麦。せいろは関東の辛汁で、温汁や冷やかけには関西の出汁を効かせて

気分によって2種類から選べる冷たい蕎麦。写真は「細挽せいろ」

蕎や 月心」の蕎麦は、外一(蕎麦粉10:小麦粉1)だ。毎朝、必要な分だけ石臼で挽いた蕎麦粉を使用して、つなぎは最小限。蕎麦本来の素材と食感を引き立てた手打ち蕎麦は、香り高く、喉越しも心地良い。冷たい蕎麦※ を注文する際には「細挽きせいろ(ほそびきせいろ)」と「玄挽田舎(げんびきいなか)」から選ぶことができるのも、蕎麦好きにはたまらない。
温かい汁に「玄挽き田舎」蕎麦をあわせると伸びやすくなるため、温かい蕎麦に関しては「細挽せいろ」のみで提供

写真:月心 蕎麦

蕎麦の産地は毎日掲示される

「細挽せいろ」には、北海道から鹿児島まで津々浦々、その時にベストな蕎麦の実を取り寄せる。丸抜き(玄蕎麦の黒い殻を剥いた状態)の実を細かく挽いて、そこへ粗目に挽いた蕎麦粉を2割ほど配合。つるりとした食感に面白味を出した、独特の喉越しが特徴だ。枚数限定の「玄挽田舎」は、玄蕎麦(黒い殻が付いた蕎麦の実)のまま石臼で粗く挽くことで、蕎麦らしい野趣溢れる香りと味をぐっと引き出した、挽きぐるみ。こちらには、試行錯誤の末に片所さんが最も惹きつけられたという茨城県産の有機栽培された常陸秋蕎麦を契約農家から直接仕入れている。

店の味を決める「かえし」に使うのは、醤油、みりん、砂糖のみ。素材にこだわりながらも余計なことはせず、あくまでもシンプルに。冷たい蕎麦には利尻昆布と本枯れ節の辛汁を、温かい蕎麦や冷やかけには、4種類の節と利尻昆布の旨味がふくよかに感じられる関西出汁をあわせて、どこまでも蕎麦の風味を引き立てる味わいに仕上げている。

猪口をはじめとするお店の陶器にも、店主・片所さんのこだわりが詰まっている

蕎麦はもちろんのこと、「蕎や 月心」には旬の食材を使った一品料理と店主の選んだ日本酒が揃う。

「お酒のあてに気の利いたメニューがあって、締めの蕎麦も最高に美味しい。そんな店を作りたくて、「蕎や 月心」を開きました。蕎麦はもちろん、季節の料理やお酒も楽しんでほしいです。」

ジャズが流れる店内は、モダンな雰囲気で居心地が良い

店の看板「細挽せいろ蕎麦セット」、夏季限定の「冷やかけすだち蕎麦セット」。片所さんの打ち立て蕎麦が、自宅で味わえる

EAT UNIVERSITYが運営する、お取り寄せグルメのセレクトショップ「3rd Menu」。ここへ集まるのは、編集部が選び抜いた、本当に美味しいレストラン仕込みのメニューばかり。自宅で食事を楽しむ機会の増えた、新しい時代。プロにしか生み出せない食の感動を、食卓へ!

EAT UNIVERSITYが運営する「3rd Menu」に、「蕎や 月心」から「細挽きせいろ蕎麦セット」と、「冷やかけすだち蕎麦セット」の2品が出品された。挽き立ての蕎麦粉を使って片所さんが打った蕎麦(生麺)と、蕎麦の風味を活かすために作られた蕎麦つゆが届くので、後は蕎麦を美味しく茹でるだけ。店で提供されるものと同様、蕎麦もつゆも、添加物・保存料は一切使っていない。
※お取り寄せに関しては「細挽せいろ」のみ。「玄挽田舎」は取り扱っていないのでご注意ください

好みのお酒を用意すれば、「蕎麦屋で一杯」気分を自宅でも楽しめる

片所さんの手打ち蕎麦をシンプルに味わうなら、「細挽せいろ蕎麦セット」。セット内容は、打ち立ての蕎麦(生麺)と蕎麦つゆ。甘さ控えめのつゆが、さらに蕎麦の風味を引き立てる。締めの蕎麦湯まで楽しんで、余すことなく本格手打ち蕎麦を味わい尽くそう。

写真:月心 そば

冷やかけ用の蕎麦つゆは、ぜひともキリッと冷やして盛り付けたい

「冷やかけすだち蕎麦セット」は夏季限定の商品。毎年、心待ちにしている常連客も多い。セット内容は、打ち立ての蕎麦(生麺)、冷やかけ用の蕎麦つゆ、徳島県産のスダチ。4種類の節と利尻昆布の旨味がたっぷり感じられる関西出汁とスダチの上品な酸味、そこへ蕎麦の香りも合わさって、すすると爽快感がたまらない。こちらももちろん、締めの蕎麦湯まで美味しく味わえる。

店で出しているものと全く同じものを、注文が入ってから1つ1つ準備している

手打ち蕎麦の茹で方のコツの説明書も同封されている。写真は「細挽せいろ蕎麦セット」

蕎や 月心
住所:東京都 目黒区中町 2-44-15
電話:03-3791-1173
3rd Menu 出品者紹介ページ
3rd Menu 商品ページ:
細挽せいろ蕎麦セット
冷やかけすだち蕎麦セット