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「飲む」

ルチアーノ・サンドローネ ドルチェット ダルバ|週末ワインライブラリー

「飲む」

この連載で追求するのは、自分へのちょっとしたご褒美や友人宅に招かれた際に持参したい、週末にゆったり楽しむワイン。上限予算は3,000円。ハレの日のラグジュアリーなワインや、毎日の晩酌用のデイリーワインも欠かせないけれど、最も深くワインの愉しさ奥深さを教えてくれるのは週末に味わうワインたちかもしれない。レクチャーしてくれるのは、世界各国を飛び回りながら年間500種以上のワインを飲む干す「るもわ脛」氏。

ほぼ毎晩、ワインで晩酌をする日々が10年以上になる。そのワインライフの楽しみの一つが、国内外で気に入ったワイン産地を訪問しブドウ畑を眺め、ワイン造りへの思い入れに触れることだ。そうすることでそのワインをより深く分かった気になる。優れたワインは解説なくして飲み手の感動を誘うが、ワインが造られた土地の空気を吸いながら造り手の情熱に触れることで、ワインを嗅覚、味覚のみならず頭とハートからも楽しめる、と言うと大げさだろうか。

ピエモンテを旅しながら味わった3つの品種

4年前の冬、北イタリアのピエモンテ州を旅した。急斜面のブドウ畑がどこまでも続くワインの銘醸、バローロ村を訪問した際には気合を入れて星付きのレストランに入り、目の前で極薄に削られパスタのうえにハラハラと降る白トリュフの香りに思わず唸ったのも良い思い出だ。ひと擦り1,000円少々だったろうか、香りにうっとりし店員さんにストップを掛けるのを忘れると、お会計で驚くことになる。ワイン漫画『神の雫』にも登場したルチアーノ・サンドローネでの試飲は旅のハイライトだ。畑ごとのワインを飲み比べさせてもらったが、自慢の畑であるカンヌビ・ボスキスのワインのスケール感には圧倒された。

旅の道中では、ピエモンテを代表する3つの黒ブドウ品種、ネッビオーロ、バルベラ、ドルチェットを用いたワインをひたすらに飲み歩いた。まずはイタリアを代表する赤ワイン、バローロを生み出すのがネッビオーロから。バローロというワインの呼び名はバローロ村でこの品種から造られるワインのみにこの呼称を用いることが許される。旅行中に味わったバローロの多くは、タンニンを絶妙なバランスで保ちつつ、快活な酸味を伴う豊かな赤色系ベリーの果実味に溢れていた。続いてネッビオーロに並ぶ、ピエモンテ州を代表するバルベラ品種も忘れてはならない。同州の作付面積の3割超を占める人気の品種ではじけるような果実味、やわらかいタンニンが特徴だ。

今回の1本はルチアーノ・サンドローネが手掛けるドルチェット

最後に、三つ目のドルチェットをカバーすればピエモンテ州の赤ワインを一通り把握できるはずだ。ドルチェットは果実味豊かでかつ酸味が穏やか、親しみやすい口当たりでグラスがスルスルと進んでしまう、普段ワインを飲まない人にもおススメのチャーミングな赤ワインだ。ルチアーノ・サンドローネがアルバ地区で同品種から造る『Luciano Sandrone Dolcetto d’Alba (ルチアーノ・サンドローネ ドルチェット ダルバ』は、日本でも3,000円で手に入る。ワインをグラスに注ぐと強く黒みがかったガーネット、液面の輪郭のエッジには鮮やかにレッドが差す。香りには溌剌としつつもしっかりと熟したプラムや、実の詰まった黒色ベリーなどに溢れ、軽やかでワインになじんだ樽香が素晴らしいバランスで織り込まれている。風味は濃過ぎず薄すぎずほどよい凝縮感、赤色系ベリーを思わせるチャーミングで親しみやすい軽やかな果実味、ワインに心地よい輪郭を与えるこぎみよい酸味、タンニンは滑らかに舌に当たる。

ぜひ、こちらのワインには、ミートソース・スパゲッティやマルゲリータなどトマトソースを使った気軽なイタリアンのみならず、肉じゃが、焼き鳥、鳥の照り焼き、豚肉の生姜焼きなどの和食とも合わせてみたい。総じてイタリアワインは幅広い料理と合わせやすい懐の広さを持っているので、思い思いに様々な食事に合わせてみてもらいたい。