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【ドイツワインの今を巡る旅】急斜面で生まれる、全てが計算し尽くされた「完璧」な白ワイン

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ドイツ西部在住で、EAT UNIVERSITY上でこれまでに2度、新型コロナウィルスの影響下にあるドイツの食事情についてレポートしてくれた駒林歩美さん(過去記事はこちらから)。今回、長く、厳しい行動制限が緩和されはじめている現地で、駒林さんはワインの名産地であるモーゼル川沿いのワイナリーを、自転車で巡る旅に出掛けました(第1回第2回第3回第4回第5回) 。

それから30km下流に進んだピュンダーリッヒ村のクレメンス・ブッシュを訪れた。ここはドイツにおけるオーガニックワインの先駆けとなったワイナリーで、全てが計算し尽くされた「完璧」なワインを作る。

ドイツ・オーガニックワインの先駆け

ブッシュ家は数世代にわたって、急な斜面でぶどうを作り、ワイン作りを行ってきた。1975年から醸造を任された現在の当主であるクレメンス氏が、オーガニックワイン作りを始めたそうだ。

このワイナリーが一番大事にしているのは、「環境を大切にすることで、最高品質とオリジナリティを備えたワインを作ること」だそうだ。化学肥料は一切使わず、ぶどうの木の免疫力を高めて力強いぶどうを作ることを目指している。殺菌作用のあるさまざまなハーブやエキスを木に塗り、硫黄や銅などの成分を含む貝殻などの天然の肥料のみを与える。

その有機農法は、自然療法を生み出したルドルフ・シュタイナーの思想に影響を受けているそうで、小手先だけのものではなさそうだ。

環境保護意識の強いドイツでは、オーガニックの食品が好まれる。いまではオーガニックの認証を持つワインを作っているところも多いが、一から始めるには並大抵の努力では実現しなかったことだろう。

全てが計算された完璧な白ワイン

クレメンス氏の作るワインは、繊細さが重ね合わせられ、完璧さを追求しつづけたからこそできあがったものだということが、一口飲めばわかる酸味と甘味に加え、苦味や渋みが調和している。

川沿いにあるワイナリーの対岸の急な斜面で、ほとんどのぶどうは作られている。斜面の土壌はすべて粘板岩の薄い層であるスレート質なのだが、場所によって土壌の風化の度合いや含まれるミネラルが異なり、赤い岩石、青みがかった岩石、グレーがかった岩石と少しずつ違う。また、斜面の中のぶどうの木の位置によっても、少しずつ暖かさなどが異なるのだが、その微妙な差がワインの味わいを少しずつ変えていくのだ。

クレメンス氏のワインは、その差をストレートに感じられ、芸術品のように思えた。太陽や風、雨の恵みなど自然の力を最大限に活用することで作られ、手で積まれた力強いぶどうを、時間をかけて丁寧に絞り、発酵させることで、自然の味わいがそのまま生きるのだと言う。

絞られたぶどうの果実にも、何も加えず、自然に発生する酵母に頼り、最低8〜10ヶ月とゆっくり発酵させる。高価格帯のワインは樽でもっと長く発酵させるそうだ。

クレメンス氏にも会うことができたが、深い哲学を持ち、信念に基づいて独自の道を切り開いてきた、穏やかさと知性を持った人物であった。今は息子のヨハネス氏にワイナリーを譲るために一緒にワイン作りをしているらしい。

なお、クレメンス・ブッシュのワインで日本に輸入されているのは、最上級畑から取れた「リースリング・マリーエンブルク・ファルケンライ」などの高価格帯のもので、6,000円程度から購入できるようだ。高価だが、複雑な味わいを持った、完璧なリースリングを試したいと思ったら、是非試して欲しい。

寒冷な気候ゆえの難しさ

なお、近年は温暖な気候に助けられてきたドイツのワイナリーだが、2021年は春になっても涼しい気候が長く続き、雨が多かったことから苦戦させられていたようだ。初夏にやっと温暖になったので、状況は改善してきたが、雨が多かったために、近隣の村には、ぶどうがほとんど使い物にならなくなってしまったワイナリーもにあったと、クレメンス氏は語っていた。

寒冷な気候でワインを作ることの難しさを思い知らされる。リースリングは多少の寒さと乾燥に強い種で、ほどほどの雨は必要だが、雨が多すぎると強い実が育たない。オーガニックでぶどうを育てていると、その難度はさらに上がるとクレメンス氏は語っていた。

洪水によるワイナリーへの被害

なお、ドイツ西部では、7月半ばに過去に例のない規模の大雨で、多くの地域が洪水被害を受けた。モーゼル川流域でも多くの地域で洪水が発生し、川沿いにあったこのワイナリーの美しい建物の1階も浸水してしまったらしい。モーゼル川領域に関しては、何年かに一度は洪水が起きるので、すぐに下のフロアにあったワインなどを移動させる時間はあったようだが、ぶどうの生育状況は懸念される。

洪水で特に壊滅的な被害を受けたのは、モーゼル川よりも北側に流れるアール川周辺で、ダムの決壊などで、津波のような勢いを持った大量の水が村々を襲った。アール川流域もワインの名産地であったが、完全に破壊されてしまったワイナリーもいくつもあった。

熟成させていたワインが失われただけでなく、ワインづくりのための機械や車、建物、住まいもすべて破壊され、今年は収穫すらできないことが懸念されている。各地から入ったボランティアが片付けや収穫に向けての手伝いをし、泥にまみれた販売前のワインボトルなども販売され、多くの寄付が募られている。

駒林 歩美
歴史と緑の豊かな、ドイツ西部の小都市でのんびり暮らすフリーランサー。これまでオランダやイギリスの大学院で学び、東南アジアなどで働き、あちこちで美味しいものを探す。6カ国目のドイツでは、ソーセージなどの肉料理、ドイツパンの美味しさに目覚める。時には新鮮なシーフードを求めて欧州各国を旅するのが好き

 


 

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