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【ドイツワインの今を巡る旅:最終回】親子2代で完成させるピノ・ノワールの味わい「フリーズ」

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ドイツ西部在住で、EAT UNIVERSITY上でこれまでに2度、新型コロナウィルスの影響下にあるドイツの食事情についてレポートしてくれた駒林歩美さん(過去記事はこちらから)。今回、長く、厳しい行動制限が緩和されはじめている現地で、駒林さんはワインの名産地であるモーゼル川沿いのワイナリーを、自転車で巡る旅に出掛けました(第1回第2回第3回第4回第5回第6回) 。

最後に訪れたのは、国内の評価が上がっているフリーズだ。急成長の裏には、ワイン作りを各地で学んできた息子がワイナリーに新しい風を吹き込み、父と一緒にワイン作りに携わっている。

ドイツでの評価が高まるワイナリー

フリーズは、ドイツのワインガイド「ヴィヌム2021」でモーゼルの急成長中のワイナリーとして紹介されていた。その背景にあるものを見たいと、旅の終わりに訪問することにした。

同ワイナリーのあるヴィニンゲンは、モーゼル川のかなり下流にあるとてもかわいい村だった。村の建物が白で統一され、すべての通りにアーチ状にぶどうのつるがかかっている、ここはモーゼル川流域のなかでも元々比較的温暖で、良質なワインができることで有名で、モーゼル川沿い上流の他の地域よりも数週間早くぶどうを収穫できる。

その村に9代続くこのワイナリーは、ご夫婦とその息子さんで運営されている。急な斜面で育てた高品質のぶどうを、昔ながらの手法で収穫し、愛情をこめてワインを作っているそうだ。

手作業で収穫する畑は、機械で作業できる畑よりも5〜6倍もの作業時間を要するが、濃厚な果実を作れ、風味豊かなワインができる。

それに加えて、この地域の美しいテラス畑という文化と景観を守るためにも、大変な労力はかかるけれども、斜面の畑から手作業で取れたぶどうを使うという伝統を家族で守り続けているのだそうだ。

現在成長中のピノ・ノワール作り

このワイナリーの特徴は、ぶどうの作付けの配分にある。75%を白ワインのリースリング、25%を赤ワインやロゼのピノ・ノワールと、ピノ・ノワールの配分がモーゼル川流域の平均の5%よりも著しく多いことにある。

現在の当主のライナー氏が、赤ワインのピノ・ノワール作りに力を入れたのだ。
白ワインづくりと赤ワインづくりは、まったく別のものだと母親のアンケさんは語っていたが、より力強い土壌を必要とする赤ワイン作りは、一から始めなくてはいけなかったそうだ。

ワイン栽培を専門に学べるガイゼンハイム大学で学んだ息子のダニエル氏は、ピノ・ノワールが有名なブルゴーニュや米オレゴンで赤ワイン作りを学んできた。

戻ってきたダニエル氏は、ブルゴーニュで見てきたやり方で、ピノ・ノワールを作り始め、彼の作り上げた2019年のピノ・ノワールはやっと今年販売が始まったところだ。

「ヴィニンガー・ピノ・ノワール」は、タンニンの香りはするが渋みも少なく、酸味と渋みのバランスがとても良い、夏の時期にもぴったりの赤ワインだった。

残念ながらまだ輸入している業者がおらず、日本では入手不可能だ。

長年の経験を持つ父親と、世界各地でワイン作りを学んできた息子で作り上げる赤ワイン。今後の展開が非常に楽しみである。もっと有名になって値段が高騰してしまう前に、色々試しておこうと思った。

ここのワイナリーで、代々引き継がれる家族経営のワイナリーというのは、それまで代々積み上げられてきた伝統に、新しい世代が革新を加えていくというものであり、長く続くということの意義を感じさせられたのであった。

なお、私はここで、手で収穫されたピノ・ノワールからのみ作られているロゼ・ワインが気に入り、自転車の旅も最終日ということもあって、ロゼを少し購入し、自転車にくくりつけたバッグに詰め、自宅に持って帰ったのだった。

終わりに

今回、ワイナリーを回ってみて気付かされたのは、どのワイナリーも、昔からの伝統的な発酵と熟成のやり方に戻し、ぶどうの持つ自然の力を高めることで高い品質のワインを作っていることだ。

良いぶどうを作るにも、余計なものは加えず、丁寧に剪定をし、ぶどうの力を果実に集中させる。そして、土壌から得られたぶどうの個性を最大限に引き出させているのだ。

特に手作業の多いワイン作りで、自然な形をとるのは労力がかかり、難易度も上がるが、それだけの熱意をかけて愛情を持って作られるからこそ、すばらしいワインが生まれるのだろうと学ばされた。

駒林 歩美
歴史と緑の豊かな、ドイツ西部の小都市でのんびり暮らすフリーランサー。これまでオランダやイギリスの大学院で学び、東南アジアなどで働き、あちこちで美味しいものを探す。6カ国目のドイツでは、ソーセージなどの肉料理、ドイツパンの美味しさに目覚める。時には新鮮なシーフードを求めて欧州各国を旅するのが好き

 


 

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